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名古屋地方裁判所半田支部 昭和44年(タ)2号 判決

原告(反訴被告) 河村愛子

被告(反訴原告) 河村栄

主文

原告(反訴被告)と被告(反訴原告)とを離婚する。

原被告間の長男巨士(昭和三三年二月四日生)及び弐女令子(昭和三六年六月四日生)の親権者をいずれも原告(反訴被告)と定める。

被告(反訴原告)は原告(反訴被告)に対し金二二〇万円を支払え。

原告(反訴被告)のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は本訴反訴を通じ原告(反訴被告)と被告(反訴原告)の平等負担とする。

事実

第一、原告(反訴被告、以下単に原告という)訴訟代理人は

一、本訴請求について主文第一、二項及び「被告(反訴原告、以下単に被告という)は原告に対し金七〇〇万円を支払え訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、

反訴請求について請求棄却の判決を求め、

二、その請求原因並びに事実上の主張を次のとおり述べた。

(一)  原告と被告とは昭和三二年二月頃結婚して同居生活を始め、昭和三三年四月一日その旨の届出を了し、その間に長男巨士(昭和三三年二月四日生)長女フミ子(昭和三四年一二月一九日生、同日死亡)弐女令子(昭和三六年六月四日生)を儲けた。

(二)  ところが、被告は昭和四二年八月頃から原告らのもとを去り、被告肩書住所において訴外小出須美子と同棲生活に入り、爾来原告らとの家庭生活を省ることなく、原告とその二児の生活費として同年一二月末金一万円を原告に渡しただけで、一切これを支給しないばかりか、原告が生活に窮し、被告方に赴き同居を求めるや、営業の邪魔になると称して原告の入居を拒むような事態に立ち至つたので、こゝに原告は被告との離婚を決意し、昭和四二年八月二五日被告を相手方として名古屋家庭裁判所半田支部に離婚並びに財産分与請求の調停を申立てたが、昭和四三年一月該調停は不調に終つた。

以上の如き被告の所為は正しく民法第七七〇条第一項第一号、第二号にいわゆる不貞の行為、悪意の遺棄に該当し、婚姻を継続し難い重大な事由があるものというべきである。

(三)  原告は、被告と結婚した当初、被告の営む昼はうどん屋夜は屋台の中華そば屋といつた家業に励み、その間多大の資金を蓄え、次いでこれを基に昭和四二年四月頃別居するまでの間、被告とともに稼働した結果、現在被告名義になつている知多郡東浦町大字生路字池下二八番の二宅地一四二・〇一平方米、同所家屋番号大字生路第四〇五番の三木造瓦葺平家建居宅床面積五六・八五平方米(以下、単に「東浦町の宅地、居宅」という)とそこで営業中のパチンコ店の機械設備、営業権のほか、現在原告名義となつている半田市新栄町二三番家屋番号新栄五四番の三木造瓦葺二階建店舗床面積一階三八・四七平方米二階二六・二八平方米(以下、単に「新栄町の居宅」という)及び動産類、時価にして金一、〇〇〇万円をくだらない財産を取得するに至つている。

(四)  以上の次第で、原告は被告との離婚を請求するとともに現在前記長男巨士、弐女令子はいずれも原告が養育していて今後もこのまゝ監護養育してゆくのが相当であるから、右二児の親権者を原告と指定することを求めるほか離婚に伴う財産分与として金五〇〇万円、離婚により原告の蒙つた精神的苦痛を慰藉するに足る慰藉料として金二〇〇万円の支払を求めるため、本訴請求に及んだ。

三、立証〈省略〉

第二、被告訴訟代理人は

一、本訴請求について「原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、

反訴請求について主文第一項及び「原被告間の長男巨士及び弐女令子の親権者をいずれも被告と定める、訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、

二、その答弁並びに反訴の請求原因を次のとおり述べた。

(一)  原告主張の本訴請求原因中第一項の事実及び被告が昭和四二年九月頃から原告らの生活費を支給していない事実並びに調停申立とそれが不調になつた経緯が原告主張のとおりであることはいずれもこれを認めるが、その余の事実はすべて否認する。

(二)  原被告が婚姻するに至つた経緯は、昭和三二年二月頃原告の現住する新栄町の居宅に妻子とともに居住し麺類の屋台営業をしていた被告が、半田市雁宿町に新たにうどん店を出すにつきその店員として、当時料理屋の接客婦をしていた原告を雇いいれたところ、原告が右妻子のいる居宅に入り込んだため、先妻がその子を連れて家を出被告と離婚した後、原被告が婚姻するに至つたというわけである。

(三)  ところが、原告は被告と結婚するや、うどん屋の現業の方は構わず、専ら会計経理の一切を掌握し、秘かに多額の金銭を貯め込む一方、持病のバセドウ氏病の治療に金四〇〇万円以上もの消費をするなどして我儘一杯に振舞つてきた。

(四)  その後、被告は昭和四一年二月頃、それまで続けてきたうどん屋からパチンコ営業に転業することとして、被告の現住する東浦町の宅地居宅を買入れてパチンコ店を開業し、新栄町の居宅からこゝに通勤するようになつたがいつしか営業上の必要から右東浦町の営業所の方に寝泊りするようになつたところ、原告は当時右パチンコ店の従業員として稼働していた訴外小出須美子という未亡人と被告との仲を疑り出し、種々いやがらせをし、それが営業妨害にまで発展し、被告を困惑させていたのである。挙句の果てに、原告は昭和四二年八月二七日被告の不在中、右店舗内に入り応接間のロツカーを合鍵であけて現金その他重要書類を持ち出し、そのうちの一部を隠匿しその余を焼却するに至つた。

(五)  以上のとおり、被告はこれまで数年の間原告との間に夫婦関係なく、誠に愛情の乏しい暗い生活を送つてき、また今後も両者が夫婦として正常な婚姻関係を継続することは期待できないし、このように原被告間の婚姻関係が破綻したのは被告側にだけ責任があるのではなく、原告にも責任があるものというべきであるから、民法第七七〇条第一項第五号にいわゆる婚姻を継続し難い重大な事由があるものといわなければならない。

(六)  原告は二児の親権者を原告に指定する旨の申立をしているが、収入の道なく病身の原告に二児を託することは頗る不適当であり、子に対する愛情は被告も決して原告に劣るものでなく、経済的能力の点からみても親権者は被告に指定さるべきが相当である。

(七)  よつて、被告は原告との離婚を請求するとともに、長男巨士、弐女令子の親権者を被告と指定することを求める次第である。

(八)  なお、被告が原告らに対し生活費を支給していないのは原告の父親と従業員との間に紛争が起り、昭和四二年八月末パチンコ店を一時閉鎖するのやむなきに至り、その間収入が挙げられなかつたのと、原告が前記のとおり営業経理を一手に握り既に相当の蓄財をして生活に窮していたわけではなかつたことから、被告において原告らに対する生活費の支給を一時停止しているうち、本訴の提起をみるに至つたので、その後右の状態が継続しているに過ぎないのである。

三、立証〈省略〉

理由

原告と被告が昭和三〇年七月頃結婚して同居生活を始め、昭和三三年四月一日婚姻の届出をし、その間長男巨士(昭和三三年二月四日生)長女フミ子(昭和三四年一二月一九日生、同日死亡)弐女令子(昭和三六年六月四日生)の三子が生れたことは被告本人尋問の結果及び公文書であるから真正に成立したと認める甲第四号証(戸籍謄本)によりこれを認めるに足り、これに反する原告本人尋問の結果の一部は措信しない。

(離婚の請求について)

一、いずれも成立に争のない甲第二、四、五、六号証、甲第八号証の一、二に証人石井純二、同竹内義一、同永井福松、同岩立利枝、同鈴木みのる、同水野要の各証言及び証人小出須美子の証言並びに原被告各本人尋問の結果のいずれもその一部(但し後記措信しない部分を除く)を綜合すれば、次のとおりの諸事実が認められる。

(1)  被告はかねて新栄町の居宅に妻子とともに居住し、半田市雁宿町に店舗を借りてうどん屋を営んでいたが昭和三〇年五月頃、当時同市内の料亭で仲居をしていた原告に対し右うどん店の手伝方を懇請してこれを雇入れ、原告が右店舗に住込み稼働中、原告と同棲生活に入り、そのうち原告とともに居を右新栄町の住居に移し、そこで右妻子と暫くの間同居していたが、妻がその子を連れて実家へ帰つた後、同年一〇月三一日右妻と協議離婚する旨の届出を了し、爾来原被告は夫婦生活を継続し、その間前示のとおり婚姻届も了するに至つたこと。

(2)  被告は以上のようにして原告と結婚してから昭和三〇年一〇月頃前記雁宿町のうどん店を廃業して、その店舗を他に賃貸するとともに、屋台による中華そば屋を始め、原告もこれに協力し、夫婦揃つて努力に努力を重ねた甲斐あつてそこから挙がる収益の蓄積や右店舗を売却した代金等をもつて昭和三二年一一月知多郡南知多町内海に約一五〇坪の土地を買入れたほか、昭和三三年七月頃当時賃借中の前記新栄町の居宅も買受けて、これらを手に入れる等して蓄財に心掛けるうち、右内海の土地の価格が高騰したこともあつて、これを売却してパチンコ店を買受け屋台営業からパチンコ遊戯場経営に転業しようと企て、昭和四一年一月右土地を売却した金六五〇万円をもつて直ちに東浦町の宅地居宅である諸設備完備のパチンコ店を買受けたうえ、こゝでパチンコ営業を開業するまでにこぎつけ、今や、事業の発展とともに、原被告の夫婦仲も円満に進んでゆくかに見えた。

(3)  ところが、昭和四二年に入り訴外小出須美子が被告の経営する前記パチンコ店の従業員として稼働するようになつてから事態は一変した。すなわち、被告はパチンコ店を開業した当初は原告が病弱のためもあつて、東浦町の営業所に転居することなく、新栄町の居宅から右東浦町の店舗まで通勤していたが、新規の事業を軌道に乗せるため、これに全力投球する必要から、新栄町の住居に帰宅せず、右店舗に寝泊りするようになるうち、その頃被告の誘めによつて同店の従業員となつた訴外小出須美子と親しくなり、その後急速に両者の間柄は進み、その間特別の関係があるとの噂がしきりに流される一方、このような状況を見聞するに至つた原告は被告に対しことの真偽を問詰するし、被告もかゝる原告の態度をわずらわしく思い、ただ自己の言に従わぬと立腹するだけで、原告の抱く疑惑、誤解、不安を氷解させるなんらの措置をとることもせず、原告が病弱のため被告の要求に応じないこともあつて、なにかにつけ原告を疎んじ始めたため、昭和四二年三月頃から漸く原被告の夫婦仲にも亀裂が生じ、その間に些細なトラブルが絶えないようになり、同年六月に入るや、被告が自身の世帯道具を新栄町の居宅から東浦町のパチンコ店に運んだことから爾来原被告は夫々の肩書住所に居住し、完全な別居生活に入るに至つたこと。

(4)  このような状況のうちに、昭和四二年六月頃原告は被告と同居すべく前記巨士と令子の二児を伴い家財道具をもち被告の住居に赴くや、被告より営業の妨害になるからと入居を拒否されて被告と同居することもできず、さらに同年九月以降被告から右二児とともに生活している原告に対する生活費、養育費の給付が全く途絶えている(但し、昭和四二年一二月に金一万円だけが支給されている)こと。

(5)  そこで、原告はやむなく事務員として勤務し、現在では月収約四万円を得、漸く親子三人の糊口を凌いでいること。

(6)  これより先、昭和四二年八月原告は被告との婚姻生活を諦め被告を相手方として家庭裁判所に離婚の調停を申立てた結果、両者もとより離婚の点については合意したものの、財産分与の額につき意思の合致がみられなかつたため、昭和四三年一月調停不調となつたこと。

(7)  その間、被告は原告と離婚する意思を固めるとともに、いつしか前記訴外小出須美子と情を通じ、肩書住居において同棲生活を始めるようになつたこと。

以上の各事実を肯認するに充分であり、これに反する証人小出須美子の証言並びに原被告各本人尋問の結果のいずれもその一部は前掲諸証拠に比照し信用できず、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。

二、叙上認定の事実によれば、被告にいわゆる不貞の行為があり原告を悪意で遺棄したこと明らかであるから、原告の離婚請求はこれを認容すべきである。

三、なお、被告は原告が婚姻中多額の財産を隠匿していると主張し、被告が原告との同居を拒否しているのは原告が被告の営む営業を妨害するためであると弁疏しているけれども、これらの事実を確認させるに足る証拠はないし、仮に原告が営業を妨害したとしても、原被告の婚姻関係が破壊され始めた主たる原因は、前認定のとおり、被告が他の女性と親しくなりその関係がただならぬ仲になつているとの噂がしきりに立つているのに拘らず、しかも被告の僅かな心遣いで原告の疑惑を容易に解消できるのに、その態度を一向に改めることもせず、夫婦は互に愛情と誠実とをもつて扶けあい平和な共同生活を築きあぐべき義務を負うていることを忘れて、自己の意に従わない原告の態度を非難するに急のあまり、暴力を振い原告に別居を強いたことの点に存したものと認められ、原告の所為によつて若干営業妨害の結果が招来されたとしても、この点だけを把えて原告を責めることは相当でないものといわなければならない。

四、次に、被告は原告の病弱の点を挙げ、これが治療費に数百万円を投じたと非難するけれども、そして原告が結婚当初から持病のバセドウ氏病、心臓神経症に罹病し、日頃病気勝ちでこのため幾許かの治療費を費消したことは前掲証拠からも窺われるものの、同証拠によれば、原告はそのため永い間臥床していたわけではなく、ましてや夫婦生活を営んでゆくうえになんら支障がなかつたことが認められるので、被告にあつてはかゝる原告をかばい、いつくしみつゝ円満な夫婦生活の実をあげてゆくのが婚姻の本来的精神であることを考えれば右の点は後に判示する家産増殖に対する寄与度として考慮さるべきであるが、離婚原因の一要素とはなりえないものであるこというまでもない。

五、最後に、被告は訴外小出須美子との同棲生活を強く否定し、右訴外人もそれに副う供述をし、ことの性質上これを現認したとするほどの確実な資料はないけれども、証人石井純二、同岩立利枝の各証言から窺われる右両者間の特別な間柄や、証人小出須美子、被告本人も供述するように、パチンコ店々員の勤務は長続きしないのが一般であるのに、右訴外人は昭和四二年一月頃から現在まで(その間二ケ月余の空白期間はあるが)永きにわたり被告経営のパチンコ店で稼働し、同店の内情にことのほか詳しく、当初は遅くなれば店に泊る程度だつたのが、いつしか殆んど住込み同様にもなり、ことに昭和四三年八月頃からは被告と右訴外人だけが右店舗に寝泊りし、生活している事実に本件弁論の全趣旨を併せ考えると、その明確な時期はこれを確定しえないが、遅くとも昭和四三年八月には右両名が同棲生活に入つたと推認するに難くなく他にこれを覆えす証拠はない。

六、ところで、前叙に認定した事実によると本件離婚の原因は専ら被告の責に帰すべき事由によるものというべきところ、およそ有責配偶者からの離婚の請求は許されないとすること判例であるから、被告の本件反訴請求は棄却さるべきであると解されないこともない。

しかしながら、有責配偶者からの離婚請求の許されない理由はかゝる離婚請求が認められるとすれば、配偶者の一方が離婚原因に該当する行為に及んでおきながら、法の保護を受けて離婚することができるということになり、ひいては離婚を目的として不貞行為、悪意の遺棄等をすることまで容認する結果ともなり、婚姻秩序ないし離婚制度を著しく破壊することになるからである。

従つて、このような弊害のない場合、すなわち客観的にも結婚が破綻しているうえ、原被告とも離婚意思のあることが明らかで、たゞ離婚に伴う財産関係の処理の問題で訴訟になつたような場合には、当事者の責任の有無にかゝわらず、いずれからの離婚請求を認容してもなんら支障はない。

よつて、原告の被告に対する本訴離婚の請求も被告の原告に対する反訴請求もともに認容すべきものとする。

(親権者の指定について)

原被告各本人尋問の結果によると、原被告間の長男巨士は現在一二才、弐女令子は九才で、いずれも母親である原告に養育され、証人永井福松、同広沢みねの各証言を併せ考えれば、原告には右二児を監護教育するうえで物心両面ともに欠けるところなく、さらに、前認定の如き被告の現在における生活環境からみても、右二児に対する監護教育、二児にとつての福祉幸福のためには現状を変更しない方がよいものと認められるから、長男巨士及び弐女令子の親権者をいずれも原告と定める。

(財産分与並びに慰藉料の請求について)

原被告間の離婚が認められること前判示のとおりであるから、原告は民法第七七一条、第七六八条により被告に対し財産の分与を請求できることはいうまでもなく、また前認定のように、専ら被告の責に帰すべき事由によつて離婚するに至つたのであるから、原告がそれによつて蒙つた精神的苦痛に対し被告においてこれを慰藉する義務があるものというべきである。

そこで、その程度方法につき検討するに、いずれも成立に争のない甲第五、九号証、証人相川勝、同永井福松の各証言、鑑定人酒井政雄の鑑定の結果及び原被告各本人尋問の結果の一部を綜合すると、原告は現在肩書住所に前示二児とともに居住して事務員として稼働し、月収四万円位の給料をえているが、財産としては、前認定のとおり、原被告の婚姻中相協力して取得した時価約金七〇万円の建物(原告が現住する新栄町の居宅)が原告名義になつているほか、みるべき資産なく、一方、被告にあつては、さきに認定したように、昭和四一年一月頃原告の献身的な助力をえて取得した東浦町の宅地居宅(時価約金三二〇万円)を所有し、現在そこで訴外小出須美子と同居し、パチンコ機械約九〇台を備える遊戯場を経営し、それによつて、いくら低く見積つても一ケ月に金一〇万円をくだらない収益を挙げている(前顕甲第九号証を見れば、昭和四二年二月末から七月中旬までではあるが、日に二万円前後の売上げのあることが窺われ、証人相川勝の証言によつて認められる必要経費を差引いても、純益として一日金五、〇〇〇円を下廻ることのないものと認められ、営業日数一ケ月二五日として計算しても月に金一二万五、〇〇〇円の収益となる。)ことが認められ、これに反する原被告各本人尋問の結果の一部は措信せず、他に右認定を左右するに足る信用できる証拠はない。以上の事実に前記認定の婚姻が破綻するに至るまでの事情、婚姻継続期間、離婚原因、婚姻継続中における原被告協力の状況、離婚後における財産取得能力等、その他諸般の情状を斟酌して考えると、(なお、前記新栄町の居宅たる建物は婚姻中取得した夫婦共有財産であるが前示のとおり離婚が認められ、しかも原告名義となつているので、これをそのまゝま原告の所有とみうえで)財産分与として被告から原告に対し金一〇〇万円を給付し且つ本件離婚の慰藉料として金一二〇万円を支払うのが相当であると認める。

(結論)

以上説示のとおり、原告の本訴並びに被告の反訴のうち離婚請求はいずれもこれを認容するとともに、未成年の子女の親権者を原告ときめるほか財産分与として被告に対し原告に金一〇〇万円を支払うよう命ずることとするが、原告が被告に対し支払を求める慰藉料としては金一二〇万円の限度で正当であるからこれを認容するも、それを超える原告の請求部分は理由がないから棄却を免れず、(なお、親権者の指定、財産分与の請求は非訟事件の性質をもつので、当事者の申立に拘束されず、従つて申立と相容れない点ないし申立の額を超える部分については主文において請求棄却を宣言する必要はない。)訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉浦龍二郎)

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